2018/11/16
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
災害時にハンディをもつ要配慮者の定義とは?
次は、減災と男女共同参画研修推進センター・共同代表でもあり、早稲田大学地域社会と危機管理研究所・招聘研究員の浅野幸子さん。

自分たちで企画したイベントでありながら、盛りだくさんだなあと書きながらしみじみ思っています。
浅野さんは、多様性の視点から地域や自治体の防災力を高めていこうと、全国各地で講演や研修を行っています。さらに、内閣府の「避難所運営ガイドライン」、「男女共同参画の視点からの防災・復興取組み指針」などの策定にも関わられてきました。

浅野さんは、まず、海外の支援は、災害時に脆弱性のある人とする範囲が広いということを教えてくれました。
国内の議論では災害時に配慮しなくてはいけない人たちを「災害弱者」や「災害時要援護者」という言葉で示し、具体的には、
-妊産婦・傷病者、
-外国人居住者、旅行者
のような方たちを想定してきました。
危険が迫った時に、身体・情報・対応でハンディをもつと思われる人たちです。
けれども、国際的な議論では、多様な人々として、性別、性自認、そして年齢によっても対応が異なると捉えられています。それだけでなく、家族構成や、就労状況など、社会・経済・文化や政策等の影響によって、個人や地域の被害の程度や拡大傾向が異なってくると捉えています。
例えば、同じ妊婦さんでも、シングルマザーの人や介護もされている方への支援は異なります。同じ問題を抱えている人も経済力によっても様々な違いがあるはずですから、このように議論の幅が広いと、よりきめ細やかな支援につながります。
スフィア基準でも、国際的な議論と同様、脆弱性を広く捉えていて、子ども、ジェンダー(特に女性への配慮)、高齢者、HIV/AIDS、障がい、心理的問題、災害リスク軽減、環境・気候変動などについて横断的なテーマとして、常に意識して書かれています。

スフィア基準の全体の構成としては、被災者の人権、支援を受ける権利について確認した上で、すべての分野に共通する基準(コア基準)について記述し、さらに分野別の基準を取り上げるという形となっています。
これについては、先週の記事でも書きました。災害時、脆弱性のある被災者は今よりさらに厳しい状態に置かれがちです。それゆえスフィア基準では、被災者の権利保護・当事者性をとても重視しています。
次回は、それを受けたコア基準から性別・多様性に関連した部分を浅野さんに紹介していただきます。
(続く)
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